『嫌われ松子の一生』

見ていて序盤であまりの既知感にぶっ飛ぶ。昨日みた 『メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬』とあまりにも中身が同じ。やっぱりこの映画もあれだ、つまんない人生、だめな生き方を送った人への鎮魂歌なんだ。メルキアデスも松子も同じ、得ようとしたものに逃げられ裏切られなんにも残すことが出来なかったけど、彼、彼女に関わったほんの僅かの人達に、たしかになにかを与えていた、それは、本人の知らない所で…。
何と無く気になったのが、今自分を幸せと感じている人がこの映画にどんな感想を持つのだろうということ。かわいそうと同情するのか、その愚かさを責めるのか…。
そして思ったのが、今この映画をみる多くのひとが、こんなありえない人生をおくる松子に自分の姿を重ねてしまうだろうなあということです。シンシティ、三丁目の夕日もかくやというほど夢のようにきらびやかでずる過ぎるほど感傷的な映像で展開されるラストシーンの美しさを、でもあれってただの現実逃避だし、と静かに距離を置ける人ははたしてどれだけいたでしょうか。
虚しくて切なくて遣る瀬無くて、そして最高に優しくて極上にエンターティナー!!
ああ、愛しの中谷美紀女史の代表作はもう『ケイゾク』じゃなくなっちゃうんだ…。そんなトンチンカンなことをゴージャスなスタッフロールを眺めつつはんば放心しながら考えてました。